2012年5月20日日曜日

人間・環境学会第19回大会ワークショップ 「仮設住宅の質 応急と住まいをめぐる諸問題」を拝聴して

避難所から仮設住宅に移る。これは、プライバシーを考えても、居住環境の質を
考えても数段のグレードアップである。しかし、それまでの住まいから 考えれ
ば、狭く、不自由で、人間関係も再構築せねばならない。生活の質は劣る。それ
を建築的に改善できないか。タイトルからは、そういう意図が読 み取れる。
しかし、そういうワークショップではなかった。

雨露を凌ぐ仮の住まいをどう豊かにしていくか。それは一つのテーマに違いない
のだが、パネリストが訴えていたのは、仮設住宅のもう一つの特徴。 「仮設で
あるが為に、出て行かざるを得ない。」という未来を見据えてその環境を捉える
ことであった。
避難所→仮設住宅→復興住宅
そう、仮設は2年ほどの期間限定なので、定住の地へと移行しなくてはならな
い。以降の計画は誰が立てるのか。行政? 専門家? そうだとしても住 民を
無視して、住民が満足するものができはしないだろう。では、彼らは復興計画を
立てられるのか。

阪神淡路大震災の教訓として、仮設住宅は「地域一括・被災地近接・被災者主
体・生活総体」という仮設市街地4原則というものがあるそうだ。これ は、被
災前の結びつきが仮設住宅のQOLに大きく関わるという意味だと思っていたのだ
が、それだけではない。つまり、復興計画を協議するには、地 域の者たちが集
まって話し合いをする環境を提供する必要があるということ。そのためにも、被
災地の近くに、近くに住んでいた者達が集まって、その 土地のその後について
話合うことができる。それが重要だという指摘があった。バラバラでは、集会所
もないようでは、それは難しいと。

迂闊にも、私はまったくそこに思いが至っていなかった。
仮設住宅という環境は、「未来への準備の場」としての役割も担うのだ。

なぜ、気づかなかったのだろう。
きっと、傍観者としての浅ましい感覚、「与えてやっている」的な感覚を私は
持っており、それが邪魔していたのだと思う。仮設住宅の供給の段階で思 考停
止してしまっていたのだ。

東京も、近い将来、地震に襲われる可能性があると言われている。
それは、暖かくなる春ではなく、厳冬のさなかに起きるかもしれない。
働き手が都心に出払っている昼間に起きるかもしれないし、火を使う煮炊きの時
間に起きるかもしれない。
地下鉄やエレベーターに閉じ込められるかもしれない。
より多くの人命が失われ、被災者のための仮設住宅を建てるスペースも資材も技
術者もお金も足りず、路頭に迷うかもしれない。家族を抱えた我々は、 どうし
たらいいのだろう。

そういう応急の場面に目が行くことは自然だし、必要だ。まずは、そこの混乱・
被害を最小限に抑えることに心血を注ぐことになるだろう。しかし、速 やか
に、そしてできるだけスムースに「普通」を取り戻すことも考え合わせておかね
ばならない。それは非常時にはできづらいことだから、今やる。
そういう教訓として捉えねばならない。

これでは、東京人が東北人の苦しみを見て、自分のことを心配している図に過ぎ
ない。文章を書いていたら、そうなってしまった。批判されるだろうな あ。し
かし、敢えて書いておきたい。東京が壊滅した時、それを手助けすることは、格
段に難しい。規模も密度も違いすぎる。日本全体を考えても、東 京の自衛は大
切だろう。

阪神淡路大震災の頃より、建設業界が傷んでいるから、仮設住宅の供給能力は落
ちているという話もあった。対応は益々難しいのだ。
・住まいの点検・補強をし、被害を最小限に食い止める。特に怪我などを避ける
ための備えは、やっておくべき
・非常時は3日間は自衛することと言われているが、それはもう少し長めに設定
しておいた方がいい。
・地縁をわずかでも築いておく(地域に顔見知りを作っておく)
・避難所生活や仮設住宅での生活は、人間関係でも生活環境作りでも創意工夫で
ずいぶん変わってくる。パネリストの一人岩佐明彦先生の「仮設のトリ セツ」
でも眺めながら、人との交流のイメージを膨らませ、生活のシミュレーションを
しておく。
・家庭、職場、地域の復興についてもシミュレーションしておく。準備しておく
といいことは何か考え、必要な備えをしておく。(ex. 子供とこういった話をし
ておくだけでも、心のケアの必要性を減ずることができる可能性はあるのではな
かろうか? それは、家庭の復興を早めることにつなが るかもしれない。)
 まず、個人としてできそうなことから挙げてみた。この小文を読まれる方に、
(東京都などの)行政の方などいらっしゃらないだろうか。パネリスト の方々
はきっと協力してくださる。そういう現場で揉まれた知恵を活かして、未来に備
えるプロセスを実現できないだろうか。

一聴衆が勝手に書き殴った失礼をお詫びしつつ、独断のレポートを閉じることに
する。

仮設のトリセツ
HP
http://kasetsukaizou.jimdo.com/

http://www.amazon.co.jp/s/?ie=UTF8&keywords=%E4%BB%AE%E8%A8%AD%E3%81%AE%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%BB%E3%83%84&tag=googhydr-22&index=aps&jp-ad-ap=0&hvadid=21811820497&hvpos=1t1&hvexid=&hvnetw=g&hvrand=7571527277523773&hvpone=&hvptwo=&hvqmt=e&ref=pd_sl_2ippvc1tr1_e

ワークショップを企画した建築社会研究会
http://iwasa.eng.niigata-u.ac.jp/pass/
Facebookのページも開設したそうだが、検索に引っ掛からない。